2018.06.21
本学部生命コースの福田智一教授が、共同研究者である国立がん研究センターの清野透部門長、国立環境研究所の片山雅史特別研究員、大沼学主任研究員、名古屋港水族館の栗田正徳らと共に、アカウミガメ、ヒメウミガメ、タイマイ、アオウミガメの染色体数が同じであることを発見しました。近年、アカウミガメ、ヒメウミガメ、タイマイ、アオウミガメの交雑種の割合が増加し、純粋種の絶滅が危惧されています。環境省レッドリスト2017では、国内に分布する多くののウミガメ種が絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅰ類およびⅡ類)に分類されています。研究チームは、これらのウミガメの染色体数が同じであることを発見し、交雑種増加の原因の一部を明らかにしました。1949年の報告ではアカウミガメのみ染色体数が異なると報告されていましたが、今回、詳細な解析により、主要ウミガメ種は同じ染色体数であることが明らかになりました。
また研究チームはヒト由来のたった2つの遺伝子(変異型サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)、サイクリンD)を入れるだけで、ウミガメ細胞の寿命を劇的に延長できることを発見しました。 今回発見された培養細胞の継代回数の延長は、細胞分裂を負に制御するブレーキのような仕組みがヒトを含む哺乳類と爬虫類で共通していることを機能的に証明した世界初の発見です。また得られた細胞は元の染色体パターンを維持するため、将来的にウミガメで指摘されている重金属や化学物質の影響を評価できる可能があります。この様な絶滅危惧動物の細胞を保存すれば、将来的に個体の再生に繋がる可能性もあります。
この研究成果は、Nature Publishing Groupの学術誌である「Scientific Reports」に掲載されました。
問い合わせ先:
理工学部生命コース教授 福田 智一(ふくだ ともかず) [email protected]