2017.01.23
岩手大学理工学部生命コースの佐藤雅俊修士課程大学院生(2 年)、菅野江里子准教授、冨田浩史教授らは、波長感受域の異なる2つの光受容タンパク質を網膜に導入し、失明したラットの視覚感受性を高めることに成功しました。ChR2(青色のみに感受性を持つ)遺伝子を用いた遺伝子治療の臨床試験が網膜色素変性症 患者を対象に米国で始まっていますが、感受波長が青色 に限定されるため、視覚が回復したとしても青色しか見ることができません。2014 年、我々は全ての色に応答する遺伝子 (mVChR1)を開発し、遺伝子導入によって失明に至ったラットが全ての色を感知できるようになることを報告しています。今回、 ChR2 を持つラットに mVChR1 遺伝子を導入し、2つの遺伝子を持つラットの視覚機能を調べ、mVChR1 遺伝子を追加導入する ことで感受性を高められることを実証しました。これらの結果は、複合的に遺伝子導入を行い、機能を順次高めていくことが可能 であることを示しており、将来的には色覚を作り上げることも可能であることを示しています。この研究成果は、1 月 23 日午前 10 時(英国時間)に英国ネイチャー出版グループの「Scientific Reports」電子版に掲載されます。